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ここや/そこ/あちこちで/わたしたちは/徹底的に

鈴木一誌   毎日、新聞紙面のどこかに電子書籍関連の記事が載った。世の中が騒然とした感じだ。

 この『d/SIGN』18号では、前号で予告していたとおり、特集を<電子書籍>と決めていた。2010年3月ころから、電子書籍に関する本を読みはじめる。iPadの日本での発売が予告され、電子書籍の日常生活への浸透が急速にリアルなものとなり、毎日、新聞紙面のどこかに関連の記事が載るようになった。世の中が騒然とした感じだ。渦中のひとであるボイジャー社の荻野正昭さんが、ある講演で言っていた「走りながら考えている」とのことばを思いだす。『d/SIGN』も、走りながらの編集作業になるだろう。
■3月某日…出版社31社が集まって、一般社団法人日本電子書籍出版社協会(「電書協」)が正式に発足。
■3月26日…電子書籍の全貌について、自信がもてず、喜多千草さんに「特集監修」をお願いするが、喜多さんが「カリフォルニアで在外研究中」で、断念する。「来ているのが、Stanford大学というシリコンバレーの中心地なので、すべて、地理的には近くで起こっています」と返事がきた。
■4月7日…KindleDXを米国アマゾンから購入。読みたい書物や新聞を選ぶと、その刹那、流体のようにテキストがディスプレイに呼びこまれ、驚く。
■4月8日…最初のラフな目次案をつくる。電子の本が普及するとしても、<読書>の根幹が変わるわけではない。電子の本にではなく、読書について四方田犬彦さんに語ってもらい、これを基本にしようと考えた。

<中略>

■5月10日…iPadを予約する。周囲へのリサーチをはじめる。さまざまな意見があった。<中略>
 このレポートで、「原研哉さんと永原康史さんがtwitter上で議論したのがきっかけで、その後、タイポグラフィの研究会が企画されているそうです」ということを、はじめて知る。永原さんのこんなコメントが引かれていた。「どう見えるかは制御も固定もできない。これがデジタルメディアの特性。ならばどうするか。アルゴリズミックなデザイン思考に切り替えるしかない。これが定着と複製の繰り返しによる従来の文字媒体との大きな違いです。/アルゴリズミックデザインの造型は、絵画型ではなく写真型であるといえる。絵画は一枚の絵を塗ったり削ったりして仕上げていきます。写真はたくさんのショットから1枚を選ぶ」

<中略>

■5月21日…ソニーが情報端末に関してグーグルと提携を発表。

<中略>

■5月28日…午前9時30分、新宿のヨドバシカメラ東口店でiPadを受けとる。帰宅後、早速京極夏彦『死ねばいいのに』電子版を購入。「ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社は27日、電子書籍のネット配信を手がける新会社を7月1日に設立」との報道(朝日新聞)。iPad発売に「合わせた」との印象。

<中略>

■6月11日…「国会図書館と出版各社」が「今秋にも書籍全文検索を実験」と報道(日本経済新聞)
■6月22日…アマゾンがKindleの値下げを発表。「経済産業、総務、文部科学の3省は電子書籍の普及に向け、出版物の著作者の権利を集中管理する仕組をつくる検討に入った」と報道(日本経済新聞)
■6月23日…物書堂の廣瀬則仁さんにインタビューする。

<中略>

■7月19日…おおよその内容が見えてきたが、「テキストの構造化」を自明としてことを進めすぎた反省から、「テキストの構造化とはなにか」を書いてもらおうと、境祐司さんに会う。<中略>
 「本のスキャン 代行横行」との報道(東京新聞)
■7月20日…アメリカのアマゾンでの過去3か月の電子書籍の売り上げが、ハードカバーを抜いたとの報道(東京新聞)。シャープが電子書籍に参入を発表。
■7月27日…「デジタル教科書教材協議会」が発足。大日本印刷と凸版印刷が「電子出版制作・流通協議会」を設立。89社が参加。
■8月4日…NTTドコモと大日本印刷が電子書籍で提携と発表。
■8月23日~26日…用紙の提供を受ける各社、王子製紙株式会社、リンテック株式会社、平和紙業株式会社、株式会社竹尾、王子特殊紙株式会社を、記載順に訪ね、打ち合わせをする。
■9月1日…台割を決定する。前号より40ページ増えた。それまで別個にデザインしてきた各記事を、ページネーションしていく。偶数ページ起こしだったレイアウトを、奇数ページ起こしにしなければならなかったりする。「ページネーション・マニュアル」のドットブック化のミーティングで、ポット出版に沢辺さんたちを訪ねる。どうせなら、PDF化もしようとなり、深沢英次さんを紹介してもらう。


( 鈴木一誌 「テキストの〈構造化〉は、ひとの〈思考〉をどう変えるか [連載]ページネーション・マニュアルの冒険17」 『d/SIGN no.18』 太田出版 P188)
by JustAChild | 2010-11-04 06:14 | Wards

鈴木一誌   毎日、新聞紙面のどこかに電子書籍関連の記事が載った。世の中が騒然とした感じだ。

 この『d/SIGN』18号では、前号で予告していたとおり、特集を<電子書籍>と決めていた。2010年3月ころから、電子書籍に関する本を読みはじめる。iPadの日本での発売が予告され、電子書籍の日常生活への浸透が急速にリアルなものとなり、毎日、新聞紙面のどこかに関連の記事が載るようになった。世の中が騒然とした感じだ。渦中のひとであるボイジャー社の荻野正昭さんが、ある講演で言っていた「走りながら考えている」とのことばを思いだす。『d/SIGN』も、走りながらの編集作業になるだろう。
■3月某日…出版社31社が集まって、一般社団法人日本電子書籍出版社協会(「電書協」)が正式に発足。
■3月26日…電子書籍の全貌について、自信がもてず、喜多千草さんに「特集監修」をお願いするが、喜多さんが「カリフォルニアで在外研究中」で、断念する。「来ているのが、Stanford大学というシリコンバレーの中心地なので、すべて、地理的には近くで起こっています」と返事がきた。
■4月7日…KindleDXを米国アマゾンから購入。読みたい書物や新聞を選ぶと、その刹那、流体のようにテキストがディスプレイに呼びこまれ、驚く。
■4月8日…最初のラフな目次案をつくる。電子の本が普及するとしても、<読書>の根幹が変わるわけではない。電子の本にではなく、読書について四方田犬彦さんに語ってもらい、これを基本にしようと考えた。

<中略>

■5月10日…iPadを予約する。周囲へのリサーチをはじめる。さまざまな意見があった。<中略>
 このレポートで、「原研哉さんと永原康史さんがtwitter上で議論したのがきっかけで、その後、タイポグラフィの研究会が企画されているそうです」ということを、はじめて知る。永原さんのこんなコメントが引かれていた。「どう見えるかは制御も固定もできない。これがデジタルメディアの特性。ならばどうするか。アルゴリズミックなデザイン思考に切り替えるしかない。これが定着と複製の繰り返しによる従来の文字媒体との大きな違いです。/アルゴリズミックデザインの造型は、絵画型ではなく写真型であるといえる。絵画は一枚の絵を塗ったり削ったりして仕上げていきます。写真はたくさんのショットから1枚を選ぶ」

<中略>

■5月21日…ソニーが情報端末に関してグーグルと提携を発表。

<中略>

■5月28日…午前9時30分、新宿のヨドバシカメラ東口店でiPadを受けとる。帰宅後、早速京極夏彦『死ねばいいのに』電子版を購入。「ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社は27日、電子書籍のネット配信を手がける新会社を7月1日に設立」との報道(朝日新聞)。iPad発売に「合わせた」との印象。

<中略>

■6月11日…「国会図書館と出版各社」が「今秋にも書籍全文検索を実験」と報道(日本経済新聞)
■6月22日…アマゾンがKindleの値下げを発表。「経済産業、総務、文部科学の3省は電子書籍の普及に向け、出版物の著作者の権利を集中管理する仕組をつくる検討に入った」と報道(日本経済新聞)
■6月23日…物書堂の廣瀬則仁さんにインタビューする。

<中略>

■7月19日…おおよその内容が見えてきたが、「テキストの構造化」を自明としてことを進めすぎた反省から、「テキストの構造化とはなにか」を書いてもらおうと、境祐司さんに会う。<中略>
 「本のスキャン 代行横行」との報道(東京新聞)
■7月20日…アメリカのアマゾンでの過去3か月の電子書籍の売り上げが、ハードカバーを抜いたとの報道(東京新聞)。シャープが電子書籍に参入を発表。
■7月27日…「デジタル教科書教材協議会」が発足。大日本印刷と凸版印刷が「電子出版制作・流通協議会」を設立。89社が参加。
■8月4日…NTTドコモと大日本印刷が電子書籍で提携と発表。
■8月23日~26日…用紙の提供を受ける各社、王子製紙株式会社、リンテック株式会社、平和紙業株式会社、株式会社竹尾、王子特殊紙株式会社を、記載順に訪ね、打ち合わせをする。
■9月1日…台割を決定する。前号より40ページ増えた。それまで別個にデザインしてきた各記事を、ページネーションしていく。偶数ページ起こしだったレイアウトを、奇数ページ起こしにしなければならなかったりする。「ページネーション・マニュアル」のドットブック化のミーティングで、ポット出版に沢辺さんたちを訪ねる。どうせなら、PDF化もしようとなり、深沢英次さんを紹介してもらう。


( 鈴木一誌 「テキストの〈構造化〉は、ひとの〈思考〉をどう変えるか [連載]ページネーション・マニュアルの冒険17」 『d/SIGN no.18』 太田出版 P188)
by JustAChild | 2010-11-04 06:14 | Wards


ここや/そこ/あちこちで/わたしたちは/徹底的に


by JUSTAchild

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